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【絶版】時を喰らった怪獣
- 著者
- もりたひらく
- 叢書名
- ポエム・デュバーン8
- サイズ
- 新書
- 頁
- 92ページ
- ISBN
- 978-4-86000-7-2 C0292
- 発行日
- 2001/10/10
- 本体価格
- 800円
【 完売しました 】
太い骨格を持つ詩篇は同時にほっとするようなやすらぎの表情を見せる。”もりたひらく”の第一詩集。
現実を見据えて、なお高く・左子真由美・解説・から
誰もが現実の生活者として生きていて、誰にとっても生きることはたやすいことではない。それぞれの現実を抱え、ささやかでも夢を持ち、切り開こうとする。その中で否定的になれば、厭世的になる者、逃避的に生きる者、享楽的になる者、生き方は数限りなくあるに違いないが、もりたさんの作品を通してほの見えるものは、強靱な自己肯定に支えられた健康な詩魂である。言葉に力を感ずるのは、まっすぐな精神の故なのだろう。しかも悲壮感に裏打ちされたそれではない。そればかりか、もりたさんの言葉は小気味よいリズムさえ聞こえるような、軽やかさも併せ持っている。
「まりあ様」という詩がある。終連の
シンデシマエ
ジゴクニオチロ
どっこい 私(タエコ)は
生きている
と切り返す生きのよさ。おそらくそれが身上であるだろう。青い背をして、ピチピチと跳ねている魚のような威勢のよさ。それはあらゆる不条理なものに向けられる。
死は熟れなくてもやってくる
まだ青く固いリンゴでも 腐って落ちる
生き続けたくても 叶わない人だっているのに
生を捨てて 死にたいと願っている人もいる
(「死を惟う」より)
もりたさんはどちらかと言えば、太い骨格を持つ詩人であると思うが、その背骨の太さというのは、現実を見据えて、なお高く、現実を切り開いていこうとする姿勢に現れている。そして紡ぎ出された言葉は、また、時にほっとするような優しさ、やすらぎを見せてくれるから不思議だ。