吊り橋中西衛詩集
- 著者
- 中西衛
- サイズ
- A5判
- 頁
- 96ページ
- 製本
- ソフトカバー
- ISBN
- 978-4-86000-451-4 C0092
- 発行日
- 2021/07/10
- 本体価格
- 2,000円
人恋しさを問うているのではない
寂しさを問うているのでもない
これからの過ぎていく
短い日々の
青白い思惟
(「神社の杜」より)
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「吊り橋」と題された、詩人中西衛の繊細でかつ固有の抒情。
それは生きている不思議と死んでいく不思議の間で揺れ動いている
「命の炎」ではないだろうか。
彼は詩のように生きた、という他に詩の場所を示すことはできない。
引用した最初の二行は深い。谷底を覗いてしまう深さと恐ろしさがある。
谷底から吹き上げる風の音まで聞こえる。
(左子真由美)
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ここまで生きてきた
いつかは停止するだろう
そして
止まると二度と起き上がる
ことはできないだろう
生まれは
御嶽山の見える谷間の
草木のしげった藪の中
杣人の住む作業小屋で
降って 湧いて
山から山へ
親とともに
移動していった俺
雪解け水
せせらぎ
陽だまり
狸の寝床
ことりと音がして
小鳥が飛び立っていった
今頃になって
おかしいかも知れないが
一生懸命
抜け殻をさがしている
(「早春」全文)
● 著者について ●
中西 衛(なかにし・まもる)
1932年岐阜県に生まれ、福井県で過ごす。
「呼吸」同人、「PO」会員、現代京都詩話会会員、
日本詩人クラブ会員、関西詩人協会会員
詩 集『積乱雲』1987年 文童社
『山について』1990年 近代文藝社
『波濤』2015年 竹林館
『夏の二重奏』2015年 日本国際詩人協会