断崖、あるいは岬、そして地層 尾崎まこと詩集
- 著者
- 尾崎まこと
- サイズ
- A5判
- 頁
- 64ページ
- 製本
- ハードカバー
- ISBN
- 978-4-86000-243-5 C0095
- 発行日
- 2012/10/07
- 本体価格
- 1,500円
あんなに真っ赤に泣くものか//千年、万年、石の地蔵に似たものが
(「赤ん坊」より)
・・・尾崎の詩の速度のある直截性は誰にも似ていない。
尾崎においては、さよなら、とも言わずに修辞の時代が完全に終わっている。
しかし、修辞の問題ではなく本質論として、尾崎の詩は隠喩的ではなく換喩的である。
すなわち、相同性や差異が問題なのでなくて、いかに異なっていようと分かちがたく
結ばれていることが問題なのである。
生と死と、現実と夢と、男と女と、ことばとモノと…
彼の詩の根本的な痛みと官能はここから来ている。
だから彼のことばは直接、心の深部に触れてくるのだ。 (D・H)
――――――――――――
――――――――――――
――――――――――――
海のなかに母がいて
母のなかに海がある
……詩人のいうとおり
人は海から来た
しかし、誰ひとり
生きて海に還ったものはいない
今は海
時の雨が
夜の星のように降っている
やまない雨音は
わたしに歌う
孤独は
だれも愛さないことではない
孤独は
ひとりを深く愛してしまったこと
(「方舟より」)