夜伽話加藤廣行詩集
- 著者
- 加藤廣行
- サイズ
- A5判
- 頁
- 88ページ
- 製本
- ハードカバー
- ISBN
- 978-4-86000-421-7 C0092
- 発行日
- 2019/12/10
- 本体価格
- 2,000円
夢と現実(うつつ)を往来することばたち。
硬質で端正な文体は、詩人の資質と詩への志から来るものであろう。
主に、夢と現実の狭間に取材されたようなテーマを扱いながら、
驚くべき言語空間のリアリティをもつ。
それは日常からは奪われ、夢の中に取り残された「リアリズム」である。
荘子の故事に「胡蝶の夢」があるが、この詩集で露わにされていることばとは
あの胡蝶のことではないだろうか。
現実界と夢の世界という二つの世界を飛んで往来しているのは
詩のことばに他ならない。
それは、夢の中でも現実の中でも、深く高く覚醒を促す詩のことばである。
――――――――――― 左子真由美
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気がつくと犬が吠えている そうか呼んでいるのは犬だったのか
すると裏の畑に誰かいるな でも待てよ 裏の畑でポチが鳴くとい
うのは変だ こんな昔にポチという名がつくわけがない 怪しい犬
め それとも怪しいのは畑か 或は読み止しの二葉亭 風が運ぶ声
を捉えようと慎重にツマミをまわす 花を咲かさなければ不審の花
を 煙を上げていたものがあった筈だ あの思念の灰を集めて撒き
に行くのだ あの庭の 既に声もなく葉も落とした木に 幹をくね
らせて世を臨界に誘う根のない木に ああ裏庭などないというのに
(「ポチの庭」より)
● 著者について ●
加藤廣行 (かとう・ひろゆき)
昭和25年千葉県生まれ
日本詩人クラブ会員/日本現代詩人会会員/
詩誌「光芒」「山脈」同人・「火映」会員
既刊著書 詩 集『AUBADE』(1980年 国文社)
『ELEGY,&c.』(1991年 国文社)
『Instant Poems』(2002年 国文社)
『歌のかけら 星の杯』(2013年 竹林館)
教育論『国語屋の授業よもやま話』(2012年 竹林館)
歌曲集『ほんとはむずかしい五つのことば』(2015年 樂舎)
詩論集『新体詩の現在』(2015年 竹林館)