沈黙の空白リジア・シュムクーテ詩集
- 著者
- リジア・シュムクーテ 著/薬師川虹一 訳
- サイズ
- 18.8 x 13.8 x 1 cm
- 頁
- 152ページ
- ISBN
- 978-4-86000-419-4 C0098
- 発行日
- 2019/10/20
- 本体価格
- 1,800円
Lidija Šimkutė
TYLOS ERDVĖS
SPACES of SILENCE
私がリジアさんの詩集を翻訳し始めてからこれで五冊目となる。初めて彼女の詩を読んだ時のショックは薄れてきた。しかしリジアさんの詩は何時も魅力的だ。挑戦的でもある。彼女は決して守勢に回らない。彼女は何時も攻撃的である。彼女の鋭い打撃は何時どこから飛んでくるか判らない。読者は常に八方に気を配っていなければならないのだ。カードの奇術師が、思いがけない処から突然カードを出してくるように、彼女の文字は突然思いがけない処から読者の心臓の奥に光を刺し込んでくる。
それは文字の意味ではない、彼女は文字を意味を伝えるための道具とはしていないし、道具だとは思ってもいないだろう。言葉と文字と意味とが彼女の中では一つになっている。これは当たり前のことのようでありながら、そのとおりにはならないものだ。ラングとパロールの違いという言語学とかの問題ではなく、言葉を物として、言い換えれば、陶芸家の粘土、画家の絵の具、のように言葉、あるいは、文字、を使って彼女の世界を作り上げているのではないだろうか。(「訳者序文」より)
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WATCHING
the distance
I burn
the colour of Autumn
その隔たりを
見詰め
私は
秋色に燃える
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● 著者について ●
リジア・シュムクーテ
1942年リトアニアのサモギチアに在る小さな村に生まれた。
第二次大戦中両親と共にリトアニアを離れ、幼少期をドイツの難民キャンプで過ごす。
1949年にオーストラリアにのがれ、食事療養士・栄養士として働く。
1973-78シカゴのリトアニア言語学院でリトアニアの言語・文学の通信教育を受ける。
1977年と1987にはヴィルニウス大学で学ぶ。広く各地を旅する。
おおくの新聞雑誌・作品集に英語・リトアニア語で作品を発表している彼女の詩は多くの国語に翻訳されている。
またオーストラリアの詩人や作家の作品をリトアニア語に翻訳している。
リトアニア語の詩集は三冊出版されている。
「二つ目の願い」(1978) 『記憶という碇』(1982) AM&M出版/USA、『風と根っ子』(1991) リトアニアVaga社から出版。
バイリンガル詩集が数冊出版予定。
シュムクーテはリトアニア・オーストラリア・ヨーロッパ・アメリカで詩を朗読し、
ラジオやTVでも詩の朗読を放送している。
数多くの国際詩祭に参加してきた。
彼女はオーストラリア議会や南オーストラリア文芸局等から様々な助成金を受けている。
● 訳者について ●
薬師川虹一(やくしがわこういち)
1929年京都に生まれる。詩人、随筆家、写真家、翻訳者(フィリップ・ラーキン、シェイマス・ヒーニー、テッド・ヒューズ・リジア・シュムクーテ等)、英文学者(イギリス・ロマン派詩人の研究)、同志社大学名誉教授、詩誌「RAVINE」前編集同人。日本詩人クラブ名誉会員。日本バイロン協会名誉会長。国際バイロン協会前理事。
受賞歴:京都芸術文化協会賞
日本翻訳家協会特別賞
瑞宝中綬章
出版書:詩集『疲れた犬のいる風景』他
詩と写真集『石仏と語る』他
研究書『イギリスロマン派の研究』他