【絶版】裸木のように大瀧 満詩集
- 著者
- 大瀧 満
- サイズ
- A5判
- 頁
- 128ページ
- 製本
- ハードカバー
- ISBN
- 978-4-86000-354-8 C0092
- 発行日
- 2017/02/25
- 本体価格
- 2,000円
【 完売しました 】
この
めまぐるしく
はげしい時の流れのなかで
たとえ失うものが
多かろうとも
おまえは凛として
まっすぐに歌うがいい
いのちの愛しさを
はかなくも生きてきた
あついこころを
おまえは手放しで
せつせつと歌うがいい
あの遠く澄みきった
あおい空の下で
――序詩
頁を捲るごとにせつせつと満ちてくるものがある。さらさらと潮騒のように引いていくものがある。
日本の詩はもともと樹々の形をしているが、大瀧さんのこれらの詩群はまさにことごとく日本の詩の形を成している。詩の一行にも目指す高さがあり、それを支える底辺がある。よって、これらの詩群は感傷に流されることなく、抒情の中で言葉が屹立している。それは大瀧さんの詩人としての潔い生き方でもある。
この詩集はあなたに、死に抱かれた生の歓びと哀しみを詠うだろう。
(左子真由美)
⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉⧉
落葉
それにしても落葉よ
おまえはなんという深い色を
根気よく染めあげてきたことか
おまえがそんなに美しいのは
たぶん、自分というものを
きれいさっぱりと
棄てきったからであろう
おまえは一枚の詩だ
おまえは一瞬の音楽だ
そのおまえも
まもなく旅にでるだろう
さむい冬の路上や野原を
ひたすら漂泊(さまよ)っていくだろう
落葉よ、
なぜか私も急ぐのだ