文豪の謎を歩く―詩、短歌、俳句に即して
- 著者
- 牛島富美二
- サイズ
- 四六判
- 頁
- 236ページ
- 製本
- ソフトカバー
- ISBN
- 978-4-86000-352-4 C0095
- 発行日
- 2017/01/23
- 本体価格
- 1,400円
文学作品は織物である。
作品を紐解くことの深いよろこび・・・
旅人よゆくてのざらし知るやいさ
二十代初期に詠んだ掲出句は、自分の人生の終焉方法を予言していたことになろうか。
(<見透かしていた「のざらし」――太宰 治>より)
恋愛詩を封印した柳田国男、
鬼となり仏となる身だという夏目漱石、
若きナルシシスト堀口大学。
文豪たちの残した詩、短歌、俳句の謎を取り上げ、彼らの横顔に迫る。
詩一篇の謎
島崎藤村/永井荷風/芥川龍之介/吉川英治/正岡子規
石川啄木/徳富蘆花/松岡(柳田)国男/落合直文/林芙美子
短歌一首の謎
夏目漱石/菊池 寛/宮本百合子/上田 敏/谷崎潤一郎
島木健作/樋口一葉/尾形亀之助/堀口大学/木下杢太郎
俳句一句の謎
宮沢賢治/江戸川乱歩/佐藤春夫/斎藤茂吉/志賀直哉
森 鴎外/川端康成/太宰 治/萩原朔太郎/北原白秋
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仙台在住の私には、二〇一一三一一一四四六一八という数字が刻み込まれてしまっている。つまり、二〇一一年三月一一日、一四時四六分一八秒発生の東日本大震災のことである。書斎の本棚が崩壊、危うく部屋から脱出したので無事であったが、その後書斎に入れず二日間は魂が抜かれていたと思う。(中略)しかしその後の大津波襲来による被害者の惨状に比すれば、私の被害は物の数でもなかったのである。それが基となり、過去の地震・津波などに遭遇した文人たちはどんな風に対処して、またどんな風に作品化したのだろうか、と気になった。最初に取り上げてみたのが島崎藤村。彼は三陸大津波の発生した三ヶ月後の明治二十九年九月に仙台の神学校・東北学院に赴任。しかも被災地荒浜に行って泳いでもいる。東北学院にほぼ半世紀勤務した私は、真っ先に注目したのであった。その関連でどうしても東北関係者の文人たちの作品に触れることが多くなったわけだが、そのうちにだんだんと大津波とは関わりなく興味を持っていった次第の結果を一冊にしてみた。
(「あとがき」より)