【絶版】記憶の中のピアニシモ吉田定一詩集
- 著者
- 吉田定一
- サイズ
- A5変型
- 頁
- 136ページ
- 製本
- ハードカバー
- ISBN
- 978-4-86000-331-9 C0092
- 発行日
- 2016/05/15
- 本体価格
- 2,000円
【 完売しました 】
Pianissimo dans la memoire
Yoshida Teiichi
吉田定一の詩の本質は、きわめてわかりやすい言葉を使用しながら、
またユーモアの中に掬い取られ、「してやられた」という快感を覚える詩であっても、
読者のこころ(実存の感覚)を深くし、さらに世界へと開いていく働きがある。
一人のこころを深くする働き、すなわち実存の諸相へと覚醒を促す働きこそ、
詩あるいはポエジイと呼んでいい。
(尾崎まこと「解説」より)
記憶の中に眠っている一片(ひとひら)の光景―思い出を手掛かりにして。
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猫のひとり歩き
夕暮れが夜に
さよならすると
路地という路地から
残り少ない夕日が 蝶になって
深い夕暮れの谷間に
消えていく
そんな景色を
夢見る日暮れ時
きまって猫はこっそり
ひとり歩きにでかける
けれど猫は どこへ行くわけでもない
夕暮れどきに描く
僕らの美しい空想の中を
ひとり歩いて帰ってくる
靴屋の角を曲がって