波濤 中西衛詩集
- 著者
- 中西衛
- サイズ
- A5判
- 頁
- 146ページ
- 製本
- ソフトカバー
- ISBN
- 978-4-86000-299-2 C0092
- 発行日
- 2015/03/10
- 本体価格
- 2,000円
20年余の沈黙から現れた美しいことばの波形
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静寂の中にかすかな動きを感じとる、それはそこにないものの気配かもしれないし、または、ないように見えて本当は在るものの佇まいかもしれない。その気配が中西さんの詩の中には、全体をとおして言葉で書かれていない部分としてある。そして、その行間に漂う気配のようなものが詩をさらに豊かに奥深くしているのである。
(左子真由美「杣人のように」より)
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○長かった暑さを
振り返るかのように
さみしい時間が過ぎ去っていく
さみしいということは
過ぎ去ることなのか
あるいは
過ぎ去ったことなのか
あの雲は
長い航程を辿ってたどって
どこまで行くのだろう
行けども 行けども
空は果てしなくやがて雲は風を起こし
せつない
雨を降らすであろう(「風の正体」より)