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水の音が聞こえる―人工内耳装用記

著者
加藤敬子
サイズ
四六判
255ページ
製本
ハードカバー
ISBN
978-4-86000-196-4 C0095
発行日
2010/10/01
本体価格
1,500円

個数  

「ああ、私は外の世界と繋がった!」

銀ネズミ一色になった音の世界が教えてくれた
――自分のこころに耳を澄ますということ。
不自由であっても決して不幸ではない。
素直に綴られたこれらの記録は、闘病記を超えて
生きるということへの爽やかな応援歌となっている。

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「ああ、繋がった!」口をついて自然と声が出た。ただしその自分の声も遠いところから機械の音のように聞こえたが……。何が繋がったのか……私自身が外の世界と繋がることができたのである。

 四ヶ月半の間、私は外界から一切の音を聞くことができなかった。それが今、病室の小さな流しの蛇口をひねると、「ジャー」と水が流れる音が聞こえ、閉めるとピタリとその音も止まる。水の音は間違いなく外から私の内耳に入ってきた音である。突然の病に倒れて以来、ずっと悩まされ続けていた頭の中のわけの分からない音や耳鳴りではない。外界からの音であることは間違いなかった。少し歩くと私の足音もジッ、ジッ、ジッ、と足を動かすのにあわせて聞こえるではないか。ああ、私は外の世界と繋がった! となんとも言えない思いがこみあげてきた。
                                           (本文より)
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